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スイーツ&デストロイ

旅行記と備忘録

インドネシア バリ島 ウブド(ブランコ美術館/ネカ美術館/芸術村)

インドネシア(バリ島/ギリ・トラワンガン島) アジア

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館①

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館②

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館③

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館④

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館⑤

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館⑥

バリのダリを自称するアントニオ・ブランコのアトリエ兼自宅を改造してつくられた美術館⑦

ウブドの芸術村にあるアーティストたちのアトリエ①

ウブドの芸術村にあるアーティストたちのアトリエ②

ウブド王宮近くのバビグリン専門店「イブ・オカ」のバビグリン

 ウブドを訪ね、他のどこよりもなによりも、わたしがブランコ美術館へひかれたのは、絵画やコラージュに興味があったからではなく、その奇妙な景観のためだ。宮殿のような宗教施設のような豪奢だが異形の建物。真っ青な大理石の床に赤や緑や黄、ピンクの壁。水色の円柱に黄金色の装飾。バルコニーの柵で舞うルネッサンス調の踊り子像。なかでもまず目をひくのが、アントニオ・ブランコのサインを象ったという巨大なアーチだ。それは金と朱でふちどられたきらびやかなエントランスへつづく、石造りの階段にかかっている。というより、そびえている。中央には深紅の絨毯が敷かれ、右端では苔におおわれた龍がうねっていて、あざやかな色彩のパユン(ヒンドゥー教の祭礼につかわれる傘)やペンジョール(のぼり旗)がそれをかこうようにゆれていた。

 これが元邸宅だというのだからおどろく。ブランコ美術館はウブドの西、チャンプアン橋をわたった先の、見晴らしのいい、小高い丘のうえに建つ。自称「バリのダリ」ことアントニオ・ブランコの、住居兼アトリエだったこのアートギャラリーは、さまざまミュージアムがそこかしこにちらばる、芸術の村ウブドにおいても特異な存在だ。1999年に他界した元家主のアントニオは、フィリピン生まれのスペイン人で、放浪の果てに41歳でバリ島ウブドへたどりつく。文無しのかれはウブドの王族から無償で土地を譲りうけ、そこへ簡素な小屋を建てて一心不乱に絵を描いた。やがて妖艶なレゴンの舞踏家ニ・ロンジと出会い、情熱的に口説き落として結婚。一男三女をもうける。真っ赤なベレー帽にぴんと跳ねた口ひげ、顔つきもどことなくダリに似た男だ。

 しかし、風貌こそかれを模倣していたものの、作風はなぜか似ても似つかなかった。実際あこがれていたようなのだけれど、創作面ではあまり影響をうけなかったらしい。「バリのダリ」ってひょっとして韻ふみたかっただけなんじゃ…ともおもう。とはいえ、かれの顧客には故グレース・ケリーや故マイケル・ジャクソン(かれがアトリエをおとずれたときの写真も展示されている)など、有名人著名人がおおく、まだあばら家みたいな仕事部屋で暮らしていたころ、インドネシア独立の父、故スカルノ元大統領(デヴィの夫)もそこをたずね、絵を買い上げていったという。アトリエには風景画や人物画にまぎれてミック・ジャガーのコラージュが置かれていた。目立つのは裸婦や踊り子をえがいたもので、モデルになっているのはおそらく妻ロンジだろう。

 その絵の女性は、象牙色のやわらかな光にてらされた、褐色の肌がうつくしい。絵を入れる額縁もまたデコラティブで、バナナやカエルが彫られていたり、かやぶき屋根を模していたりするのだが、それも皆、かれとその息子マリオの作品だそうだ。父と同様、マリオも画家で、いまではかれがアントニオの仕事部屋をつかっている。まるいフロアに螺旋階段がのびる吹き抜けの展示室は撮影禁止。なので画像はないのだけれど、いくつかあるちいさなアトリエは解放されていて、こちらはだいたい写真に収められる。仕事場を美術館にするのはアントニオの晩年の夢だった。その遺志をついでマリオが完成させたのがこの美術館だ。まったくもって狂っている。とてもすばらしい。そんなブランコ邸を見学したあと、だまされて連れていかれたのがネカ美術館だ。

 プリ・ルキサン美術館へよりたいといったら、そこは遠いからむりだ時間がないと断られ、ガイドにここをすすめられたのだ。しかし、あとで地図をみたところ、ふたつはほとんど近所にあった。このミュージアムは有名な美術収集家のステジャ・ネカが建てたもので、展示物は伝統的なバリスタイルのそれからちょっと毛食の変わったそれまで幅広い。バリ島在住のオランダ人画家アリー・スミットの作品や、ポストカードにもなっているアブドゥル・アジズの絵画「惹かれ合う心」は、この第五展示室にかざられている。わたしが気に入ったのは、おなじく第5展示室にならべられた、ハジティ・ニクトリという作家の絵だ。仏頂面のハゲが頭にニワトリをのせている、背景の極彩色が印象的な油絵。男の容貌は、なんとなくリリー・フランキーを彷彿とさせた。

 ミュージアム・ショップへ赴くと、ラジオからながれる音楽にあわせ、店員がうたいおどっている。そういえば、深夜コンビニをたずねたら、従業員たちは皆、床に毛布を敷き、あるいは椅子に座ったまま、すやすやとねむっていたのだった。この国でうまれていれば、わたしはもっといきやすかったろう。美術館巡りを終えたあとはウブド王宮近くのバビグリン専門店「イブ・オカ」へ。バビグリンというのは香草や香辛料で味つけした豚の丸焼きを皮ごとスライスしてごはんにのせたもの。祝い事にかかせないローカルフードだ。「イブ・オカ」は評判の店だが、噂に違わぬおいしさだった。いまでもたまにあの香ばしさと歯ごたえを思い出す。
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