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スイーツ&デストロイ

旅行記と備忘録

べトナム ホーチミン(ベンタイン市場/聖マリア大聖堂/統一会堂/ホテルマジェスティック)

ルネッサンス・リバーサイドホテル・サイゴンの屋上から望むホーチミンの夜景①

ルネッサンス・リバーサイドホテル・サイゴンの屋上から望むホーチミンの夜景②

シャンデリアがうつくしい、ホテル・マジェスティックのロビー

市内最大の屋内マーケット、ベンタイン市場

市内最大の屋内マーケット、ベンタイン市場

ルネッサンス・リバーサイドホテル・サイゴンの朝食ビッフェ①

ルネッサンス・リバーサイドホテル・サイゴンの朝食ビッフェ②

聖マリア大聖堂(サイゴン大教会

統一会堂(トンニャット宮殿)

ホーチミン市

空港をでれば、そこはもう市街地だ。めだつのはなぜか韓国系企業の看板で、街のあちこちにハングルが踊っている。このような立地に空港があるのもめずらしい。サイゴン川沿いの宿泊先までは、空港から30分もかからなかった。ホテルに荷物を置き、さっそく通りへでると、しかし、空気がひどく澱んでいる。道路を行き交うバイクの数は凶暴で、それが吐き出す排気ガスもまた凶悪だ。おもく沈みこむ灰色の粒子が、都市全体を覆っている。これでは気管支をやられてしまう。急いでマスクをつけたものの、10分もしないうちに咽喉を焼かれた。ひりひりする痛みが喉の奥にアメーバみたいにへばりついている。食道にタールを塗られたような不快感だ。しばらくするとそれは目にも沁みてくる。サングラスは気休めにしかならないし、マスクもあまり意味がない。

とにかく空気が悪過ぎて、歩いているだけで気管支炎になりそうだ。そのうえこの街には信号がなく、歩行者優先などという交通ルールもない。ならばどうするのかというと、疾走するバッファローの群れのような、猛々しいバイクの波に、現地の人は皆、悠然と突っ込んでいく。とんでもないところにきてしまった……旅は始まったばかりだけれど、わたしはすでに涙目だった。気持ち的にも物理的にもだ。べトナムは想像以上に発展途上で、舗道はところどころ欠けていたし、そこかしこに瓦礫がちらばっていた。ビルの合間をぬってちいさなスラムが形成され、それが街のいたるところに点在している。大通りから離れたら途端に第三世界の臭いがして、シンガポールのウェットマーケットをおもいだしたが、しかし、あのときにみたいにうきうきもわくわくもしない。

交通の秩序がそこそこ保たれた国から来た者にとって、そこはほとんど戦場だった。ねずみ色の空を見上げながら、臭くて埃っぽい街を歩く。するとほどなくして、レストランや雑貨店、土産物屋や仕立て屋がたちならぶ、賑やかで華やかな通りがみえてくる。ドンコイストリートだ。わたしはまず目当ての仕立て屋へ向かう。そして、店の棚から白のシルクと黒のストレッチコットンを選ぶ。こちらは仕立て代が安いので、いくつかあつらえてもらうつもりだった。シャツとジャケットのオーダーを済ませたら、東京にもあるフォーレストランのチェーン店「フォー24」へ。たまたま通りすがったので入っただけだが、化学調味料がビシバシ効いていておいしい。これぞ東南アジアの味だ。食事を終えたら地図を片手にふたた街へでて、ティーサック通りをめざす。

カトリーヌドヌーアルメゾンはすこしさびれた裏通りにぽつんと建っている。街並とそぐわない白い瀟酒な建物で、内装もシンプルでうつくしい。わたしはここで、銀ともラベンダーとも灰色ともつかない、ふしぎな色彩の絹を買った。べトナムの物価をかんがえると、しんじられない値段だけれど、生地は最高級のものしか使わないそうで、なるほど肌触りがすばらしい。なんともいえないその色合いも上品で、光沢は控えめだが、うすく銀粉をちらしたように、全体がきらきらと光っている。真珠色の糸で施された、繊細な羽の刺繍も素敵だし完璧だ。買いものに満足して店を出ると、すでに日は落ちている。中心部にもどれば、ライトアップされたバロック様式の市民劇場や、植民地時代に作られた、コロニアル調の建築物が、闇に浮かびあがってとてもきれいだ。

ドンコイ通りは深夜まであかるい。夜には尚更あやしくみえる、マスクにサングラスという風貌で、わたしはそれでも散策を続ける。ホテルマジェスティックのステンドグラスやシャンデリアを眺めたり、電飾に彩られた遊覧船やレストラン船が浮かぶ、サイゴン川沿いを散歩したり、店頭に「モナ・リザ」や「ひまわり」が飾られた、裏道の贋作屋をのぞく。夕食はべトナムハウスで揚げ春巻きと青パパイヤのサラダ、スイカジュース。ホテルへ帰ってからは、夜景が望める屋上のプールでしばし泳いだ。眼下にひろがる原色のネオンが目映い。翌日はパリコミューンと呼ばれる広場や、その一画にそびえる、ネオ・ゴシック様式の教会「聖マリア大聖堂(サイゴン大教会)」旧大統領官邸である白亜の宮殿「統一会堂」市最大の屋内マーケット、ベンタイン市場を巡る。

ホーチミンはまだ植民地時代の面影を多くのこしている。サイゴン動植物園に隣接する歴史博物館もまた、あの時代に作られたものだそうだ。フレンチ・コロニアル風の中央郵便局は、ピンクの外壁と緑の窓枠がかわいらしい。熱を孕んだ巨大な風船におしつぶされるような感覚を味わいながら、数日かけてわたしは街を観光する。道路を埋め尽くす、あのバイクの群れにも、すこしずつ慣れていった。親切な現地の人々に手をひかれ、みちびかれながらではあるけれど、おびただしい数のバイクをよけながら、道を横断する術をなんとかおぼえたのだ。
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