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スイーツ&デストロイ

旅行記と備忘録

カンボジア シェムリアップ(アンコールワット/トレンサップ湖)

アンコールワットの朝焼け

真昼のアンコールワット

バンテイアイスレイの蓮池

バンテイアイスレイの壁画

ロリュオス遺跡

ラピュタのモデルといわれるベンメリア

トゥームレーダーのロケ地になったタ・プローム

アンコールトムで遺跡に腰かける女性

アンコールトム

青いパパイヤのサラダ

トレンサップ湖周辺の掘建て小屋

トレンサップ湖の水上都市

シェムリアップのナイトマーケット

ナイトマーケットのドクターフィッシュ

アンコールワットの夕焼け

 世界中から行楽客がおとずれる著名な観光地だけにシェムリアップもまた物売りや物乞いが多い土地なのだけれど、隣国の都市などと比べると遥にのんびりしていて、ずっと過ごしやすかった。もちろん商売熱心な子どもはいるが、目を合わさない限り基本的に声をかけてこない。地元のひとは出入りが自由なので、遺跡のなかはかれらの営業場所になっているものの、むしろ遊びのついでに物を売ったり小銭をせびったりしているような子も多い。とりあえず観光客がきたら「ワンダラー」といってみて、もらえればラッキーだし、ダメならダメでかくれんぼの続きをやろうみたいな。それくらいゆるくて適当な感じ。発する声も一様にかぼそくてふわふわしている。まるで鈴の音のようだ。かれらはひたすら弱々しく、押しの強い物売りがまとう厚かましさが微塵もない。

 ロリュオス遺跡で遭った子(3〜4歳くらいの男児)なんかちぎった雑草をわたしの手に押しつけて「ワンダラー」とねだる図々しさだったけれど、可憐な声でささやくようにしゃべるから印象は儚げだ。断ると「なんで?ビューティフルなのに……」とかつぶやいていて、それもまた可愛らしく、おもわず目をほそめてしまう。とはいえ小銭はやらないが(ビューティフルじゃねえし)かれらは塔のようにそびえる遺跡の天辺付近で見張りをしていて、カモになりそうな外国人がやってくると急な階段をよちよちと下っていく。わたしは石段に座ってしばらくかれらの仕事をながめていた。やがてそれにも飽きて周辺の村を散策していたら、赤ちゃんに毛が生えたくらいの幼児が道の向こうでちいさな手をひらひらさせている。幼児はよく日に焼けて小麦色でフルチンだ。

 なにげなく手をふりかえすと、かれはとてとてとこちらへ走り寄ってきてやはり「ワンダラー」と小銭をねだる。これにはおもわず苦笑いしたけれど、東南アジアに跋扈する百戦錬磨の物乞いたちをおもえば可愛いものだ(バリ島で遭った老人などは、とびきりの笑顔をうかべ、おどけてピースサインをつくり、さあ撮ってくれとばかりにこちらへアピールしてきたくせに、いざシャッターを切れば表情を一変させ、ドスの効いた声と面で金銭を要求するというヤクザぶり。また、べトナムのココナツジュース売りは、信号待ちをしているわたしにそっと近づき、むりやりヤシの実を持たせ、金を払えと迫る文字通りの押し売りだった)道路にはまだ赤土の部分もめだち、時おり砂埃が舞いあがり、中心地でさえ裏通りに入るとベージュの砂が敷き詰められている。のどかだ。

 遺跡へむかうコンクリートの道もところどころでこぼこだが、著名とはいえ都会ではないので、排気ガスに悩まされることもない。ホーチミンハノイの暴力的な大気汚染とアグレッシブなトゥクトゥクやバイクタクシーの運転手、観光客狙いの詐欺師たちに心底うんざりしていたのでほっとする。ただ、シヴァタ通りのシェムリアップナイトマーケット辺りを縄張りにしているらしい、裸の赤子を抱いた幼児の物乞いには閉口した。「お金はいらない、ぼくの弟にミルクを買ってちょうだい」かれは早口でまくしたて、機敏な反復横跳びで行く手をはばみ、近くのスーパーを指し示す。ディフェンスのような動きで道をふさがれるのもうっとうしいけれど、それをすり抜けようとすれば罵声を浴びせられるのがまたいやだった。そのやり方は執拗で攻撃的で乱暴だ。

 といってもなにせ幼児ゆえ、発するのはつたない文章で、おまえバカとかおまえアホとか、せいいっぱいがんばってそのレベル。でもそれをプリーズと交互で投げつけられたら、だれだって不愉快になるだろう。罵倒と哀願を繰り返しながら、幼児はまとわりついてくる。まるでDV男だ。やっとのことでふりきると、かれは背後でバーカバーカと金切り声をあげた。さすがにどんよりするしげんなりする。旅行者が男性の場合だと、10歳未満の少女に買春を持ちかけられることも、周辺ではままあるようだ。それをかんがえれば自分を買ってくれと乞われなかっただけ幾分かはマシかもしれない。かつては首都プノンペンの郊外に、少女ばかりがはたらく置屋街もあったという。娼婦は年嵩の子でもローティーン。顧客はアメリカ人とドイツ人とそして日本人だったそうだ。

 トレンサップ湖では嵐に遭い、河川敷に建つ小屋や湖上に浮かぶ家屋が吹き飛ばされていくのを船上からしばしぼんやりとながめた。わたしはそのとき簡素な木製のボートで、100万人が住むという世界最大規模の水上都市を遊覧していたのだが、船頭とガイドが寄付金詐欺に熱心なせいで、帰るタイミングを外し、暴風雨に巻き込まれてしまった。かれらはカラフルな横長の施設を指し、あの孤児院の子どもたちに鉛筆を差し入れてくれという。しかし、鉛筆はこの国の物価からすれば法外な値段だ。当然わたしは断ったのだけれど、かれらはなかなかあきらめない。そうこうしているうちに天候が急変し、すさまじい雷雨になって、生命の危機を味わった。

francesco3.hatenablog.com

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悲しきアンコール・ワット (集英社新書)

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